🔍 古事記の秘密を解き明かす、神名と伝説の由来


『天孫』邇邇藝命ニニギノミコト・天の浮橋から地に降りる
『古事記』の作者の一人  稗田阿礼ひえだのあれ は、各地の民間伝承を聞くのが好きで、いろいろな土地で、その土地特有のお話を聞いて回っていました。 今まで彼が聞いてきた話は……   【あらすじ】
・ いろいろあって高天原に神々が生まれた ・ イザナギ&イザナミの子に天照大神&素戔嗚尊がいた ・ 天照大神が岩戸の奥に隠れて大騒ぎ〜解決 ・ 素戔嗚尊がやまたのおろちを倒して、当地の英雄 ・ 大国様が、ウサギを助けて結婚 ・ 海幸彦と山幸彦 ・ 葦原中国の平定 出雲の国譲り
各地で、こんな話を聞くのが好きでした。 そして今回話をしてくれた、姉御は? 再び、危険な香りのする、あのキレイなお姉さん。   ・    ・ 

📓 古事記上巻-1 『天孫』邇邇藝命ニニギノミコト

『古事記』上巻 (八岐路・猨田彦大神) 「従正五位上」官位 太 安万侶おおの やすまろ (奈良時代)


あんた、昨日 もアタイらに話聞きに来た奴じゃないか。 なんだい、またノコノコ来たのかい。で、今度は何の話を聞きたいのさ? 『邇邇藝命ニニギノミコト』? いいじゃないか。アンタ気に入ったよ。   ・    ・  アタイらが知ってる話をするとな…… まず天界には、非常に強大な二人の神様がいたんだよ。 天照大神と彼女の父親の大王様さ。 この二人、とにかくヤバい。 ほかのみんながブルっちまうくらいさ。 この二人に睨まれたのが、出雲の大国主だ。 あちらさんもなかなかの強者でさ、使者を送って国譲りを迫っても、全部追い返してくる始末さ。 根性座ってる。 なかなかラチあかないもんだから、今度は大王様の『跡取り』を直接そこに乗り込ませて、国譲り交渉をさせようと計画したのさ。 それがコトの発端な。 天界の二人の神は、まず 天忍穂耳命アメノオシホミミ のことを指名した。 でも、天忍穂耳命アメノオシホミミ は遠回しに断ったんだ。かわりに、邇邇藝命ニニギノミコト のほうが適任だって言ってきた。   ・    ・  ……昨日聞いた話と違うって? そうさ。原文がそうなってる。 でも、どちらも作り話さ。作り話だから、いろいろ矛盾が発生する。 だから、ミスが残った形で後世に残っちまった。 ここまではいいかい? じゃあ続けるよ。   ・    ・  『天孫』邇邇藝命ニニギノミコト が、指令を受けて『天の浮橋』を渡って地に降りることになったときのことさ。 『天孫』が天から降りる時、目の前に天の大きな分岐路があったんだ。 手前は高天原、奥は出雲を照らす。でも、その分岐路は8方向に分かれていて、出雲以外の選択肢も選べた。 その8つの分岐路のところで、図体のデカい『変なヤツ』が道をふさいでたんだよ。 なんだいあれ? ってことで、天宇受賣命アメノウズメと、伊牟迦布神イムカフが前に出て、そいつに話しにいったさ。   ・    ・  「天孫が通る道を邪魔する奴ぁ誰だい?」 『変なヤツ』はこう答えたのさ。 「天孫が降りるっちゅう聞きましたどん、迎えに来たですたい」 「何だって? なんでこっちの話がそっちに漏れてんのさ? アンタ何者だい?」 「ワシの名は猿田彦大神ですたい」 そこで、天宇受賣命アメノウズメと、やり取りが始まった。

「あんた、猿田彦大神って言うんかい。驚いたねえ。で、そいつがうちの天孫に何の用だい?」 「この先にはデカイ熊がおりますたい、天孫に警告に来たですたい」 「熊だってぇ? そいつぁ面白いじゃねえか。アタイたちを待ち伏せかい?」 「熊公は強かですたい。迂回した方がよかです」 「ありがとよ! あんたが先に行くのか? アタイらが先に行くのか?」 「行き先は別々ですたい。おいどんは熊公から追われてる身ですたい。天孫は筑紫の日向の高千穂の峰に行くですけんど、おいどんは伊勢の狭長田、五十鈴川の上流に行くですたい」

ここで猿田彦神サルタヒコの指した行き先は、出雲ではなく高千穂だった。いいかい? これで都合良く、出雲に行かずに高千穂(宮崎=宮の先)に行き先変更になったってわけさ。 天の命令で、出発したはずなのに、カルい理由で目的地変更になったのは、違う理由があったってコトさ。 この変更で、物語上は、あの有名な天孫降臨の高千穂伝説につながるのさ。   ・    ・  邇邇藝命ニニギノミコト は、天の大きな分岐路から、高千穂の峰に降り立った。 そしてすぐ、桜の花のような美人、木花咲耶姫コノハナノサクヤヒメと出会って、一目で恋に落ちた。 物語の中でよくある、英雄の隣りに絶世の美女あり! ってやつさ。 早速、姫の父上である大山津見神オオヤマツミに結婚の許しを乞うと、父上はもう大喜びしすぎて、姉の石長比売イワナガヒメまでオマケで嫁がせた。 ……突っ込みどころ満載の話だろ? 一夫多妻制の時代の物語だ。気にするな。 話を続けるよ。 でも、邇邇藝命ニニギノミコト は、石長比売イワナガヒメだけ、見た目が気に入らなくてあっさり追い返しちゃったのさ。 そしたら親父さん、もうプンプンになるだろ? 「おいおい、ちょっと待ちんさい。石長比売イワナガヒメまで嫁にやったのは、お前さんの命が岩みたいにガッチリ永く続くようにって思ってのことよ。木花咲耶姫コノハナノサクヤヒメは、お前さんの家系が花みたいに栄えるようにって願いだ。2人で1セットの意味合いだ。それが、石長比売イワナガヒメだけ突き返すなんざぁ、お前さんの世は花みたいにチャッチイもんになっちまうぞ」 よくある、物語上の教訓話さ。そして場面はさらに飛んで……   ・    ・  木花咲耶姫コノハナノサクヤヒメ邇邇藝命ニニギノミコト と一夜を共にしたのさ。その後、彼女は妊娠したわけなんだけどさ、 「この子は天の神の子です」 って姫が言うのに対して、邇邇藝命ニニギノミコト は認めない。 「一晩で妊娠したのは俺の子じゃない。きっと国の神の子だろう」 と信じなかったんだ。 そしたらさ、木花咲耶姫コノハナノサクヤヒメは意地を見せて、「私の子が幸運なら天の神の子、不幸なら国の神の子です」と言い放ったのさ。 そして、出産の時、彼女は無戸の殿に入って、自分自身でその殿に火を放った。 これが、運試しの大テストだったわけさ。 そして、火の中で、姫は三柱の子を無事に産んだのさ。

  ・    ・  ニニギの部は、物語要素が強く、事実とは無縁のエピソードが中心。 今まで多くの学者たちを悩ませてきた謎。
『天孫』は出雲と高千穂、どっちに行ったのか?
実は、どっちにも行ってない。

出雲 ……天菩比神〜素戔嗚尊・雉名鳴女が行ってる 高千穂……大王様の東征前の拠点

『天孫』の移動前まではわりと詳細なのに、いざ高千穂に到着してからは、ダイジェスト版のような急展開。 一つ一つのエピソードも、空想上のモノなので、つながりがない。   ・    ・  高千穂の話は、この後で出くる大王様のお話なのです!! それでは、日本の初代天皇! いずれ、イザナギ&イザナミの伝説として、物語の主人公となる、大王様のお話です! NEXT初心者が楽しく読める古事記こじき入門14−神武天皇の英雄伝説






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